インドの新車市場で初回購入者の存在感が増している。以前は特定のモデルを決め打ちで購入しに来る初回購入者が多かったが、自動車ローンの普及により選択の幅が拡がり、より多くのモデルを比較検討するようになったようだ。米系調査会社JDパワー・アジア・パシフィックが9月30日に発表した2014年インド自動車購入忌避者調査(Escaped Shopper Study、ESS)で明らかになった。


同調査は13年9月~14年4月に新車を購入した8499人と何らかの理由で特定モデルの購入を忌避した3448人を対象とし、今年3~7月に実施された。新車購入者のうち、約50%が初回購入者だったとされる。

■別のモデルも「真剣に検討」が増加

初回購入者のうち、購入したモデルとは別に「真剣に購入を検討した」モデルが1台以上あったと回答した割合は27%だった。12年の20%からは7ポイントの上昇となっている。こうした傾向の背景には自動車ローンの普及があるとみられている。初回購入者が自動車ローンを利用した割合は73%で、12年の64%からは9ポイント上昇している。

自動車ローンの利用者は、現金で購入した消費者よりも複数のディーラー店舗を訪問する傾向が強いことも判明した。現金での購入者が別のモデルも検討したと回答した割合が25%だったのに対し、ローン利用者は同30%と5ポイント高かったとされる。

■月収9万円超の初回購入者が倍増

自動車ローンが普及し始めた要因としては、初回購入者の所得が向上し、信用が拡大してきたことがある。月額所得が5万ルピー(約9万円)を超えた初回購入者世帯の割合は12年の18%から14年には35%へとほぼ倍増した。

JDパワーでエグゼクティブ・ディレクターを務めるモヒト・アロラ氏は「初回購入者のローン利用が増えたことで、セグメントや価格帯をまたいだ選択肢を検討することが可能になった。この事実はインドでシェアを拡大したい自動車メーカーにとっては決定的に重要だ。様々なボディタイプのモデルをさまざまな価格帯に投入していくことで初回購入者に対する選択肢を提供していく必要がある」と述べた。

■内装が原因の忌避が増加

全体としては、インドの新車購入者の間では内装を重視する傾向が強まったことが分かった。内装が原因となり、あるモデルの購入を忌避した回答者の割合は12年には4%に過ぎなかったが、14年には15%へと大幅に増えている。

特に内装のスタイリングと座席の座り心地を重視する回答が目立ったとしている。

■来店前の調査も増加傾向、新型車の購入者に顕著

ディーラーに来店する前に購入を検討しているモデルについて調べたとの回答は35%に達した。12年の26%から9ポイント上昇している。特に発売されて間もない新型車を購入した回答者はこうした傾向が強く、45%が事前調査を行ったと回答。12年の同24%からほぼ倍増した。

■顧客維持率はスズキが首位

消費者が新車購入の検討を開始した際に候補とし、最終的にそのまま購入に至った割合を示す顧客維持率は業界平均が前年から2ポイント減の38%となった。ブランド別の首位はマルチ・スズキで41%だったが、前年の53%は下回っている。フォードとホンダ、現代の顧客維持率は改善したとされるが、数値は示していない。

フォルクスワーゲン(VW)とフォード、ルノーのモデルを購入した回答者は、ほかのブランドよりも多くの店舗を見て回った一方、マヒンドラやマルチ・スズキ、タタ、トヨタのモデルを購入した回答者は他の店舗を訪れた割合が少なかったとしている。

2014/10/1

 

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