自動車部品大手の米デルファイは30日、自動車用ワイヤーハーネスの結束バンドやクリップを製造する英へラマンタイトン(HellermannTyton)を買収することで合意したと発表した。買収価額は10億7000万ポンド(約2073億円)に上る。

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ヘラマンタイトンは1938年の設立で、現在の従業員数は約3000人。35カ国に販売拠点、9カ国に工場を保有している。日本には1970年に進出し、兵庫県で工場を保有している。自動車以外にも電気設備や電気電子製品、鉄道・航空・造船関連など幅広い業界向けに結束バンドなどを製造している。

買収手続きは今年の第4四半期(10~12月)中に完了する見通し。ヘルマンタイトンの取締役会からも買収について支持を得ているとした。

ヘルマンタイトンの売上高などの数値については公表していないものの、2010年以降の売上高成長率は年平均で約10%を記録しており、利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)のマージンは20%に達しているという。

■年間50億ドルのシナジーを予想

デルファイは今回の買収により、特に調達面でのメリットを見込んでおり、18年末までに年間で約50億米ドルのシナジー効果につながるとの予測を示した。デルファイの製品や技術をヘルマンタイトンの自動車以外の顧客にも拡販することで収益の拡大も期待できるとしている。

■自動運転技術の提携先も買収と出資

デルファイはまた、自動運転(自動走行)技術に関するソフトウエア開発会社であり、米カーネギーメロン大学発のベンチャー企業であるオットーマティカ(Ottomatika)を買収すると発表した。両社は14年11月に提携を発表。今年3月に実施した自動運転車によるアメリカ大陸横断プロジェクトでも協力していた。ただし、買収額については公表していない。

オットーマティカが開発するソフトは人間のような意思決定プロセスに強みがあり、具体的には4方向がすべて一時停止になっている交差点での停車と前進、高速道路での合流、市街地での自転車の動きを予測した対応といった高度な判断能力が必要とされる際に効果を発揮する。

また、レーダーセンサー技術の開発会社であり、提携先でもある米クアナジー(Quanergy)に対して「戦略的な出資」を行ったと明らかにした。出資額や出資比率については公表していない。クアナジーの技術は自動運転車が3Dマップを生成しながら走行するうえで有用とされており、特に低コストであることに強みがあるという。

■気筒休止技術の提携先にも出資

デルファイはさらにエンジンの気筒休止技術に関するソフト開発会社であるトゥラ・テクノロジー(Tula Technology)に対して出資したと明らかにした。出資額については公表していないが、出資比率については小数株主にとどまるとしている。

トゥラの技術は最適なタイミングで気筒を連続的に稼動・休止させることで走行性能を劣化させずに燃費性能を最大15%改善することが可能と説明した。

一連の買収と出資についてデルファイのジェフ・オーウェン最高技術責任者(CTO)は「いずれの企業もユニークで自動運転や低燃費化など戦略的に重要な能力を持っている。今後も当社のコア技術を高めてくれる企業の買収を模索し続けていく方針だ」と話している。

■車載受信システム事業を売却

コネクテッドカーや自動運転関連については買収や出資を行う一方、従来型のエレクトロニクス事業からは一部撤退する。同日には車載テレビ・チューナーやアンテナなどの受信機事業を中国兵器工業集団傘下の東北工業集団(Northeast Industries Group)に売却すると発表した。

移籍する従業員数や拠点数、売却額などの詳細については公表していない。今年の第3四半期(7~9月)中に手続きを完了するとしている。

2015/7/31

 

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