韓国のLG化学は16日、電気自動車(EV)の電池の熱暴走を防ぐプラスチック素材を開発したと発表した。2023年から本格的な製品生産を開始するとしている。


電池の熱暴走はEV火災の主要原因で、さまざまな原因により電池セルに負荷が加えられて熱が発生する現象。過電圧や過放電など短絡によって電池の内部温度がある程度のレベル以上に上がれば火炎が発生するが、リチウムイオン電池は水との反応性が高いため、火災時に水で消火する事が難しい。

LG化学が開発した新規の特殊難燃性素材は、ポリフェニレンオキサイド(PPO)系とナイロン樹脂であるポリアミド(PA)系の多様な素材群を有する高機能性エンジニアリングプラスチック素材。火炎遮断性能があり、射出成形加工が可能。耐熱性が優れており、EV用電池の部品に適用した場合、一般の難燃性プラスチックに比べて長い時間、火炎を遮断できるのが特長で、電池の部品に適用すれば、火災発生時に火炎を遮断して拡散を防止し、運転手の退避や火災鎮圧に必要とされる時間を確保するために役立つと期待される。

■1000度でも火炎伝播を10分以上防止

また、温度変化に対しても形態を維持する寸法安全性も優れており、同社の独自試験の結果によると、1000度でも熱暴走による火炎伝播を10分以上防止する。これは一般の難燃性プラスチックに比べて10倍以上優れた性能という。

LG化学は今年中に量産体系の構築を完了し、顧客企業の日程に合わせて来年から本格的な製品生産を開始する予定。現在、韓国内をはじめ、米国、欧州などで特許出願手続きを進めている。今後は自動車だけでなく、多様な産業分野に素材適用を拡大して行く計画としている。

2022/5/17

 

2週間無料お試し購読 購読を開始する