旭化成エレクトロニクスは29日、同社とエレクトロニクスとソフトウエアベースのシステムの研究機関でオーストリア企業のSilicon Austria Labs(SAL)が炭化ケイ素(SiC)を用いたパワーデバイスを利用した高電圧アプリケーションにおける電子ヒューズ(eFuse)技術の共同技術検証に成功したと発表した。検証結果により、両社が共同開発したeFuseが電気自動車(EV)に搭載される充電器(On Board Charger:OBC)などのシステムの安全性を大幅に向上させ、部品やメンテナンスのコストを削減できる可能性があることが示されたとしている。
■過電流対策の強化が課題
EVをはじめとする高電圧アプリケーションでは、高効率化を進めるため、これまでのシリコン(Si)材料のものから、SiCや窒化ガリウム(GaN)といった次世代の半導体材料を用いたパワーデバイスへの切り替えが進んでいる。これらの次世代パワーデバイスを使用するシステムでは、過電流が発生したときにデバイスを保護し、コストのかかるメンテナンスを回避するため、これまでよりも高速にシステムをシャットダウンさせる必要がある。これらの理由から、これまで過電流対策として使用されてきた機械式ヒューズよりも、高速応答性で優位なeFuseが求められているという。
旭化成エレクトロニクスはSALと共同で技術検証を行い、機械式ヒューズを用いた従来の保護システムの課題を解決するeFuseシステムを開発。旭化成エレクトロニクスが本今年2月に発表したコアレス電流センサー「CZ39シリーズ」は応答時間が100ns(ナノ秒、ナノは10億分の1)と非常に短く、高精度であることが特長で、同製品をeFuseに用いることで過電流を即座に検出するとともにシステムの高速なシャットダウンを実現した。
■システム全体の部品点数を削減可能
eFuseソリューションは、OBCなどSiCやGaNベースのパワーデバイスを搭載した次世代の高電圧EVシステムで求められる過電流と短絡保護機能を提供。さらにeFuseを電流センシングにも活用することで、システムに流れる電流も効率的に調整することができ、システム全体の部品点数を削減することが可能という。
旭化成エレクトロニクスは6月に独ニュルンベルクで開催されるPCIM Europe 2024でSALとの共同研究の成果について詳細を発表する。
2024/05/30