ゼネラル・モーターズ(GM)の欧州子会社であるオペルは8日、工場の生産工程をゲーム化した研修用システムを開発したと発表した。2015年から従業員の訓練に活用する方針だ。


同システムの名称は「VISTRA(Virtual Simulation and Training of Assembly and Service Processes in Digital Factories)」。任天堂のゲーム機であるWiiのコントローラーとマイクロソフトのキネクトカメラを組み合わせたシステムで、従業員がスクリーンに表示されたバーチャルな生産ラインの前で両手の動きなどを見せることで作業手順を学ぶことができる。


■Q&A方式で体験学習

ゲームのなかでは「エアバッグを組み付けるには、どのような部品が必要か?」や「その部品はどのような形状か?」、「どこに、どのような順番で組み付けるか?」といった問い掛けがある。プレーヤーはWiiのコントローラーのボタンを押したり、人間の動きを検知するモーションセンサーを反応させるように行動することで質問に回答していく。

モーションセンサーはプレーヤーの動きを全方向で検知し、カメラもプレーヤーの動きを認識する。例えば、プレーヤーが適切な部品を選択してコントローラーのボタンを押してから、生産ライン上の車体の適切な位置に取り付けるといった動きに対応することができる。各工程に必要な部品をすべて組み付けることができれば、ゲームをクリアしたことになる。

VISTRAの開発プロジェクトを主導した Frank Arlt氏は「バーチャルな訓練ソリューションはほかにもあるが、それらはユーザーが人間であることを忘れている。パソコンの前に座り、マウスとキーボードを操作しているだけでは、十分なリアリティーがあるとはいえない」と述べた。

■従来よりミス40%減

Arlt氏によれば、VISTRAの研修を受講した被験者は、従来の訓練用の生産ラインや車両、各種部品の現物を利用したプログラムを受講した被験者よりも、ミスの発生件数が40%も低かったという。

また、被験者からは従来型の研修を受けた場合よりも、現場でより安全に作業できたと感じているとの回答が得られたとしている。

このほかにもVITRAには現物を必要としないため、低コストで運用でき、従来よりも早く研修を終えて従業員を現場に配属することができるといったメリットがあるとした。ただし、現物を使用した研修プログラムを完全に代替することまではできず、当面は従来の研修を補完する役割を担うとした。

VISTRAの開発プロジェクトには欧州連合(EU)も資金を助成しており、オペルのほかにドイツとスウェーデン、英国、デンマークの研究機関が参画。オペルの10人を含めて計50人が開発に当たったとしている。

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2014/12/9

 

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