ドイツの自動車部品大手ZFは6日、車両の外部に展開するサイドエアバッグを装備した世界初のプリクラッシュ乗員安全システムのプロトタイプを公開した。側面衝突によって乗員が負うダメージを最大で40%低減することが可能としている。

■エアバッグとセンサーをネットワーク化
ZFが開発した新システムでは、エアバッグと車両のセンサーシステムがネットワーク化されており、衝突が迫っていることを判断すると、エアバッグを展開するかどうかの決定を可能にするアルゴリズムが組み込まれている。

同システム開発の最大の課題は、衝突が起こる前に確実に衝突が不可避であるかを判断し、外部サイドエアバッグを展開させることだったという。システムがエアバッグの展開を決定してから充填を行うのには約150ミリ秒が必要。これは人間が瞬きをする時間に相当する。

まず、ネットワーク化されたカメラ、レーダー、ライダー(レーザー光線を使った距離計測技術、Lidar)による車載センサーが、衝突の可能性を素早く正確に判断。システムのソフトウエアに採用されているアルゴリズムにより、衝突が不可避であるかどうか、またエアバッグの展開が可能かつ有効であるかどうかの判断を行う。衝突が不可避であり、エアバッグの展開が可能かつ有効であると判断されると、システムがインフレーターを点火し、エアバッグを膨張させる。その後、エアバッグ(車両により容量は280から400リットルで、運転席用エアバッグの容量の5~8倍に相当)がサイドスカートから上方に展開し、A~Cピラー間のドア部分で衝撃吸収スペースを拡張する。

■負傷リスクを大幅に低減
側面衝突では、車両が大きく変形した場合に、衝突した側面側の乗員が特に胸部に重傷を負う危険を抱えている。ZFのシステムは衝突車両のインパクトを最大で30%抑制し、乗員の負傷リスクを大幅に低減する。

衝突が不可避であると予測する情報は、既存の標準的な安全技術の有効性をさらに高める効果もある。例えば、ZFの次世代のアクティブ・コントロール・リトラクター「ACR8」が衝突の直前に乗員に警告を発したり、安全な位置で固定することができるという。

2019/6/7

 

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