非営利団体の米高速道路安全保険協会(IIHS)は7日、衝突時に下肢を保護する二―エアバッグは負傷のリスクを大きく軽減する効果はなく、場合によっては負傷のリスクを増大させる可能性もあるとの研究結果を発表した。


ニーエアバッグは通常、ダッシュボードの下部から展開。衝突時の衝撃力を分散して下肢のけがを減らすことを目的としている。また、下半身の動きを制御することで、胸部と腹部にかかる力を軽減するのにも役立つとされている。

■衝突試験と衝突事故のデータを精査
ニーエアバッグが安全性を改善するかどうかを調べるため、IIHSの研究者は、衝突試験のデータと実際の衝突事故の報告書からの情報を精査した。

IIHSは車両評価プログラムの一環として実施された400以上の正面衝突試験の結果から、車両にニーエアバッグが装備されている場合の負傷の可能性が低いかどうかを調査。これによると、ニーエアバッグはドライバーサイドの「スモールオーバーラップフロント」衝突テストと「モデレートオーバラップフロント」衝突テストでダミーの負傷対策にわずかな影響しか与えなかった。スモールオーバーラップフロント衝突テストでは、下肢と右大腿骨のけがのリスクの増大に関連する一方で、頭部のけがのリスクはわずかに減少した。また、モデレートオーバラップフロント衝突テストでは負傷の軽減効果はなかった。

また、米国内の14州の衝突事故の報告書から、ニーエアバッグを装備した車両の負傷リスクとニーエアバッグを装備していない車両のリスクを比較したところ、ニーエアバッグは全体的な負傷のリスクを7.9%から7.4%に0.5ポイント軽減したことが分かったが、統計的に有意ではないとしている。

■シートベルト未着用ならけが軽減の可能性
IIHSは、一部の自動車メーカーがニーエアバッグを採用している背景には、米連邦政府が義務付けているシートベルトをしていないダミーの衝突テストを通過する目的があると指摘。IIHSの車両評価テストでは常にダミーがシートベルトを装着しており、調査した衝突事故の報告書ではシートベルトを着用していなかった場合について特に注目していないため、シートベルトを着用していない場合の衝突事故ではニーエアバッグが乗員のけがを軽減する可能性があるとしている。

IIHSの研究論文は同団体のウェブサイト( https://www.iihs.org/topics/bibliography/ref/2192 )で閲覧できる。

ニーエアバッグは、米フォード・モーターが2014年に「マスタング」に搭載したのが最初とされる。

2019/8/9

 

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