自動車部品メーカー大手の独ZFはこのほど、ハイブリッド化を前提とした新世代の8速オートマチックトランスミッション(AT)を開発したと発表した。モジュール設計によってマイルドハイブリッドとフルハイブリッド、プラグイン・ハイブリッドに対応し、出力も24キロワット(kW)から160kWまで選択可能。2022年から独ザールブリュッケン工場で量産を開始し、中国と米国市場への投入を予定している。

■電動走行時でも迅速な追い越し可能
新開発の8速ATは、エンジンを始動することなくモーターだけで450Nmのトルクを発生するため、電動走行時でも迅速な追い越しが可能。ZF内製の新開発モーターには、従来の銅線コイルに換えて溶接した銅製ロッドを使用することで、サイズを大幅に変えることなく高いパワーを実現した。「ヘアピンテクニック」と呼ぶこの技術は、パワー密度を左右する銅の密度を大幅に高めることができるという。

パワーエレクトロニクスは外付けでなくハウジング内に収められているため、トランスミッションユニットのサイズが大型化することがない。小型の油圧制御ユニットも新たに開発し、電動および電気系部品に必要なスペースを確保した。

■ポンプは1基だけ
新開発の8速ATに追加されたパ―ツはすべてハイブリッド化を念頭に設計。これまでのトランスミッションでは、エンジンが直接駆動するベーンセルポンプと電気走行時に作動する電動ポンプまたはパルスメモリー方式と、オイルポンプが2基使用されていたが、次世代型ではパワースプリットポンプ1基になる。エンジンが停止している状態では、直結された小型のモーターが作動する。

機構もハイブリッドに適した設計。4つのプラネタリーギヤと5つのシフトエレメントはこれまでと同じだが、フリクションパワーの改善により効率化を向上させた。その結果、エンジン駆動時の二酸化炭素(CO2)排出量は1キロメートル走行当たり1グラム減少し、電気駆動での航続距離も延びたとしている。



2019/7/17